以前から、WordPressの代わりにEmDashとCloudflareでサイトを運営する方法が気になっていました。
そんななか、2026年10月にPHPの脆弱性がニュースで大きく取り上げられ、WordPressで運用しているサイトへの影響が心配になりました。WordPressでも使われているPHP自体の問題と知り、サイトの仕組みや保守について、改めて調べてみようと思いました。
EmDashとCloudflareでは、管理画面で記事を書けるのか。費用はどのくらいかかるのか。WordPressと比べて、更新や保守の負担はどう変わるのか。
気になっていたことと、今回の報道で感じた不安をきっかけに、公式サイトやドキュメントを読み比べて整理してみました。
調べた範囲では、EmDash+CloudflareはWordPressの代替候補になりそうです。ただ、無料で使えることと、今のサイトをそのまま移せること、管理が楽になることは、それぞれ別の話でした。
今回は、レンタルサーバーなどで動かすWordPressと、EmDashをCloudflare上で動かす構成を比べています。実際にサイトを移行した体験談ではなく、公式資料から分かったことと、そこから考えたことをまとめた記事です。
まず分かったのは、CloudflareだけでWordPressの代わりになるわけではないこと
まずは、公式資料に出てくるCMS、Cloudflare、EmDashという言葉を整理してみました。
CMSとは?文章や画像を編集・管理する仕組み
CMSは「コンテンツ・マネジメント・システム」の略で、Webサイトの文章や画像を編集・管理するための仕組みです。WordPressやEmDashは、このCMSに当たります。
記事を更新するたびに、Webページの構造を書くHTMLを直接編集しなくても、管理画面から文章を入力したり、画像を追加したりできます。ブログの記事を書く作業と、サイトの仕組みを作る作業を分けられるのが、CMSの分かりやすい特徴だと思いました。
Cloudflareとは?サイトの公開や配信を支えるサービス
Cloudflare(クラウドフレア)は、Webサイトを動かして公開するための基盤や、配信・セキュリティに関するサービスを提供する会社です。Cloudflareという名前は、そのサービス全体を指して使われることもあります。
今回の構成では、EmDashのサイトを動かし、インターネット上に公開する場所として使います。記事を入力する編集ソフトそのものではなく、サイトが動く土台を受け持つ、と整理すると役割がつかみやすくなりました。
WordPressとEmDashは、文章や画像を登録し、記事を編集・管理するCMSです。一方、Cloudflareは、今回の構成ではEmDashのサイトを動かして公開する場所になります。
| 役割 | WordPressで運営する場合 | EmDash+Cloudflareで運営する場合 |
|---|---|---|
| 記事を編集・管理する仕組み | WordPress | EmDash |
| サイトを動かす場所 | レンタルサーバーなど | Cloudflare |
「WordPressとCloudflareのどちらを使うか」というより、記事を管理する仕組みと、公開する場所を組み合わせて比べる話でした。
Cloudflareのアカウントを作れば、それだけでWordPressのような編集画面が使えるわけではありません。EmDashと、サイトの見た目やデータの保存先を用意する必要があります。
EmDashとは?管理画面で記事を書けるCMS
EmDash(エムダッシュ)は、Cloudflareが公開したCMSで、ブラウザの管理画面から記事や画像を編集・管理できるソフトウェアです。ソースコードが公開されているオープンソースの仕組みで、Webサイトを作るための技術であるAstroを土台にしています。
公式サイトでは、記事や固定ページの編集、画像管理、下書き、変更履歴、予約公開などが紹介されています。AIと連携する機能もありますが、AIを使わずに運営することもできます。EmDash公式サイト
この点は、WordPressの代替として考えるうえで気になっていたところです。少なくとも、日々の記事更新をすべてコードで行う仕組みではありません。
2026年9月28日には安定版のEmDash 1.0が発表されています。公開当初のプレビュー版について書かれた記事と、現在の情報は区別する必要がありました。EmDash 1.0の公式発表
記事を書く場所は似ていても、サイトを用意する流れは違いそう
WordPressにもEmDashにも管理画面があります。そこで、編集画面の有無だけでなく、その前後の作業を並べてみました。
| 気になったこと | WordPress | EmDash+Cloudflare |
|---|---|---|
| 記事を書く場所 | ブラウザの管理画面 | ブラウザの管理画面 |
| 最初の準備 | 簡単インストール付きのサーバーなどを選べる | EmDashとCloudflareの公開環境を設定する |
| 見た目や機能の追加 | WordPress用のテーマやプラグインなどを利用 | EmDash用のテーマやプラグイン、必要に応じた開発 |
| 公開後の管理 | 本体、テーマ、プラグインなどを更新・管理 | EmDash、関連ソフトウェア、Cloudflareの設定などを更新・管理 |
一般的なレンタルサーバー上のWordPressと、自分のCloudflareアカウントでEmDashを運用する場合の比較です。制作や保守を依頼する場合は、自分が担当する作業も変わります。
「記事を直せる」と「サイトを自由に変えられる」は別だった
見出しを追加したり、画像を入れ替えたりするのは記事の編集です。一方、記事一覧の並び方を変えたり、独自のフォームを作ったりするのは、サイト全体の変更になります。
EmDashの管理画面で記事を書けるとしても、見た目や機能のすべてを画面操作だけで変更できるとは限りません。採用するテーマや機能によっては、開発が必要になります。
これはWordPressでも同じですが、WordPressのテーマやプラグインでできていたことを、EmDashでも同じ手間でできるとは限らないようです。WordPressとEmDashの仕組みの対応
調べていて、日々の記事更新と、サイトを作る・直す作業は分けて考えたほうが実態に近いと感じました。
編集のしやすさは、資料だけでは判断できなかった
EmDashには体験用の管理画面も用意されています。
ただ、機能の一覧から分かるのは、何に対応しているかまでです。長い文章の編集、画像の追加、スマートフォンでの操作が自分に合うかは、実際に触ってみないと分かりません。
今回調べた範囲では、「WordPressより書きやすい」「初心者なら必ず使いやすい」とまでは判断できませんでした。
気になっていた「月額0円」は、使う機能まで決めないと分からない
費用については、EmDash本体と、サイトを動かすための料金を分けて見る必要がありました。
EmDashは無料のオープンソースソフトウェアです。ただし、ソフトウェアが無料でも、サイトの運営費用まで必ず0円になるわけではありません。WordPressも本体は無料で、サーバーや独自ドメインなどの料金は別です。
Cloudflareでは、処理・記事・画像にそれぞれ利用条件がある
EmDashをCloudflare上で動かす公式の構成では、主に次のサービスを組み合わせています。EmDashのCloudflare構成
| サービス | 主な役割 |
|---|---|
| Workers | サイトや管理画面のプログラムを動かす |
| D1 | 記事や設定などのデータを保存する |
| R2 | 画像などのファイルを保存する |
完成したページを配信するだけでなく、記事を保存したり、管理画面を動かしたりする処理もあります。そのため、Cloudflareの静的ファイル配信に関する「無料・無制限」という説明を、EmDash全体に当てはめることはできません。
それぞれに無料枠や料金の条件があり、上限を超えた場合の扱いもサービスやプランで異なります。料金が増える場合もあれば、処理が制限される場合もあります。Workersの料金、D1の料金、R2の料金
プラグインの使い方によっては、有料プランが前提になる
費用を調べるなかで、特に気になったのがプラグインの実行条件です。
EmDashには、プラグインを本体と分けた環境で動かす「隔離型」の仕組みがあります。調査時点では、Cloudflare上でこの隔離型プラグインを実行するには、Workersの有料プランが必要です。プラグインの実行条件
アクセスが少ないブログでも、使いたい機能によっては有料プランが必要になるということです。
この条件を見ると、「小さいブログだから月額0円」とは言い切れません。必要な機能と構成が決まるまでは、運営費用も決まらないと受け止めました。
サーバー代以外にも、比べる費用があった
独自ドメインの取得・更新、メール送信などの追加サービス、最初の制作、移行、公開後の保守も費用に関係します。
例えば、仮に月1,000円を節約できても、移行に3万円かかるなら、単純計算で回収には30か月かかります。これは実際の料金ではなく、費用の違いを考えるための例です。
自分で設定や修正をする場合は、その時間もかかります。月額料金だけを見て「こちらのほうが安い」と比べるのは難しいと思いました。
WordPressの機能や見た目を、そのまま移せるわけではなかった
EmDashがWordPressの代替になるとして、今あるサイトをどこまで引き継げるのかも気になりました。
EmDashには、WordPressの記事や画像などを取り込む機能があります。ただし、内容を取り込むことと、サイト全体を同じ状態にすることは別です。WordPressからの移行ガイド
テーマやプラグインは、EmDash向けに用意する必要がある
WordPressとEmDashは異なる仕組みなので、WordPress用のテーマやプラグインを、そのままEmDashへ入れて使うことはできません。見た目や機能を引き継ぐには、対応するものを探すか、作り替えることになります。WordPressテーマを移すための公式ガイド
例えば、記事本文を移せても、問い合わせフォームや独自の装飾まで同じように動くとは限りません。会員機能や決済があるサイトなら、その仕組みをどう用意するかも別に考える必要があります。
記事とプロフィールが中心のブログと、多くのプラグインを組み合わせたサイトでは、移行の負担がかなり違いそうです。
記事を取り込めても、移行が終わったことにはならない
公式の移行ガイドでも、内容や画像、リンクなどを検証するまでWordPress側を残すよう案内されています。
移行には本文以外にも、公開URL、内部リンク、フォーム、広告、画像の保存先などが関係します。独自ドメインの設定を変えるなら、現在使っているメールへの影響も確認項目になります。
調べる前は「記事を移す」という部分に目が向いていましたが、サイトとして同じ役割を果たせる状態にするまでが移行なのだと分かりました。
Cloudflareを使っても、保守がなくなるわけではない
WordPressの更新や管理の負担を減らせるのか、という点も調べてみました。
WordPressでは、本体やテーマ、プラグインなどの更新が必要です。公式にも、更新と事前のバックアップが案内されています。WordPressの更新ガイド
EmDashへ移ればWordPress本体の更新はなくなりますが、EmDashや関連ソフトウェアの更新、サイト独自のコード、不具合への対応は残ります。
2026年10月のPHP脆弱性も、保守について考えるきっかけになった
今回調べるきっかけになった、2026年10月のPHP脆弱性についても公式情報を確認しました。PHPは、WordPressなどのWebサイトをサーバー側で動かすために使われるプログラミング言語です。WordPressの動作要件
今回確認したのは、「PHP2Shell」と呼ばれるCVE-2026-109618とCVE-2026-109619の2件です。悪用されると、ログインしていない第三者が、離れた場所からサーバー上で不正なプログラムを実行できる可能性がある問題でした。PHP開発元は2026年10月21日に修正版を公開しています。PHP公式のセキュリティ告知
IPAも10月22日に注意喚起を公開し、10月27日の更新では、米国CISAが悪用を確認した脆弱性の一覧にこの2件を掲載したことを伝えています。IPAの注意喚起
当該2件への修正を含むPHPの公式リリースは、8.2系では8.2.35、8.3系では8.3.36、8.4系では8.4.27、8.5系では8.5.12です。これらは今回の2件についての修正バージョンで、PHPに関するすべての問題が解消したという意味ではありません。配布元が独自に修正を取り込む場合もあるため、利用環境の対応状況は、サーバー会社や配布元の情報も関係します。PHP公式の更新情報
WordPressとの関係で分かったのは、これはWordPress本体や特定のプラグインだけの問題ではなく、その土台となるPHPの問題だということです。影響や攻撃が成立する条件はPHPのバージョンや実行環境などで異なり、WordPressを使っているサイトがすべて被害を受けた、という話ではありません。WordPress本体を更新したことだけで、PHP側も対策済みとは判断できない点が気になりました。
一方、EmDashの公式資料では、PHPを使わずに動く構成が示されています。そのため、EmDash+Cloudflareの標準構成は、今回のPHPの脆弱性を直接抱える構成ではありません。EmDashの公式構成
ただし、PHPを使わないことだけで、サイト全体の安全が保証されるわけではありません。EmDashや関連ソフトウェアにも更新は必要です。今回の件からは、CMSの操作だけでなく、その下で動くソフトウェアの更新を誰が担うかまで含めて、運営方法を考える必要があると感じました。
サーバーの管理と、サイトの管理は違う
Cloudflareを使えば、サーバー機器そのものを自分で管理せずにサイトを動かせます。ただ、一般的なレンタルサーバー上のWordPressでも、機器の管理はサーバー会社が担っています。
一方、サイトの設定、アカウントの保護、記事や画像のバックアップ、問題が起きたときの復旧は、どちらの構成でも考える必要があります。
そのため、Cloudflareに変えれば管理を全部任せられる、とは言えません。何をサービス側が担当し、何を自分や制作会社が担当するかが変わる話でした。
プラグインを隔離する仕組みはあるが、安全性を一言では比べられない
EmDashには、隔離した環境の中で、プラグインに許可する操作を制限する仕組みがあります。ただし、拡張機能の形式や実行環境によって扱いが異なり、すべての追加機能が同じ条件で隔離されるわけではありません。EmDashの権限とセキュリティ
また、この仕組みだけで、ログイン情報の流出や設定ミスまで防げるわけではありません。
技術的な対策には違いがありますが、今回の調査だけで「EmDashのほうが必ず安全」と結論付けるのは難しいと感じました。
運営を考えると、更新やバックアップを誰が行うか、表示やログインに問題が起きたときに誰が直せるかも、同じくらい気になるところです。
予算を抑えたい個人・団体、NPO法人にもおすすめできるのでは?
紹介や活動報告が中心のサイトなら検討しやすい
調べていて、予算を抑えたい個人や団体、NPO法人にも、条件が合えばおすすめできるのではないかと思いました。例えば、プロフィールや団体紹介、活動報告、お知らせなどが中心のサイトなら、必要な機能を絞って運営する形を考えやすそうです。
特に、新しくサイトを作る場合は、既存のWordPressの見た目や機能を移す作業がありません。EmDash+Cloudflareで必要なことを実現でき、初期制作から保守まで含めた費用が予算に収まるなら、候補として面白いと感じます。
担当者が変わっても更新を続けられるか
ただ、団体の運営では、担当者が変わっても更新を続けられるかも気になります。構築した人だけが設定を把握している状態では、引き継ぎや修理に費用がかかるかもしれません。記事を更新する人と、設定や不具合に対応する人を分けて考えると、無理なく運営できるかが見えてきそうです。
制作・保守・引き継ぎまで含めて予算を考える
予算が限られているからこそ、毎月の利用料に加えて、制作・保守・引き継ぎまで含めて負担を抑えられるか。この条件がそろうなら、個人のブログだけでなく、団体やNPO法人の情報発信にも検討する価値がありそうです。
調べてみて、WordPressの代替としてどう感じたか
管理画面で記事を書けるWordPressの代替候補
EmDash+Cloudflareは、管理画面で記事を書きながら運営できる、WordPressの代替候補だと分かりました。ファイルやコードを毎回編集しなければ記事を書けない、という仕組みではありません。
新規制作と既存サイトの移行では条件が違う
一方で、費用、見た目、追加機能、保守、移行まで含めると、「WordPressより新しいから」「無料で始められるから」という理由だけでは選べないとも感じました。
新しくシンプルなブログを作る場合と、今のテーマやプラグインを多く使ったサイトを移す場合では、検討のしやすさも違いそうです。
WordPressには、管理画面やテーマ、プラグインなどの仕組みがあります。必要なことができ、運営も無理なく続いているなら、長く使われているという理由だけで変える必要はなさそうです。WordPressの主な機能
使いたい構成で試し、運営方法を比べたい
今回調べて残ったのは、実際の編集のしやすさと、具体的な構成でどれくらい費用や保守の手間がかかるか、という点でした。ここは公式資料だけでなく、使いたいデザインや機能を入れた状態で試さないと分かりません。
現時点では、EmDash+Cloudflareは「WordPressをすぐ置き換えるもの」というより、ブログの作り方や運営方法を見直すときに比べてみたい選択肢、というのが調べてみた感想です。
この記事は、2026年10月31日時点で確認できる公式情報をもとにまとめています。料金、無料枠、機能、プラン条件は調査時点のものです。
